生命複雑系からの計算パラダイム

生命複雑系からの計算パラダイム―アントコロニー最適化法・DNAコンピューティング・免疫システム (相互作用科学シリーズ)

生命複雑系からの計算パラダイム―アントコロニー最適化法・DNAコンピューティング・免疫システム (相互作用科学シリーズ)

  • 作者: 大内東,山本雅人,川村秀憲,柴肇一,高柳俊明,當間愛晃,遠藤聡志
  • 出版社/メーカー: 森北出版
  • 発売日: 2003/08/23
  • メディア: 単行本
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読み終わったので書いとく

  1. アントコロニー最適化法(蟻コロニー最適化, Ant Colony Optimization, ACO)*1
  2. DNAコンピューティング
  3. 免疫システム

こんな感じで三本立て構成

アントコロニー最適化法

これすごい面白い このためにこの本買いました!
蟻は個体単位で見ると、極狭い自分のまわりの状況しか認識できないが、巣から遠く離れた餌を最短経路で運搬することができる。なぜか?

  1. フェロモンを環境に残す→蟻は餌を巣に持って帰るときに、通った道にフェロモンを残す
  2. 蟻はフェロモンの多い道を好む→フェロモンの濃度が高い道を選択しやすい
  3. フェロモンは揮発する→しばらく時間が経つとフェロモンの道は薄れていく
  4. 蟻の歩行間隔はほぼ一定→通行する個体の数とフェロモンの濃度は比例する

よって、より短い道ほど時間単位で多くの蟻が餌を運搬するので、どんどんフェロモンが強化されていき、最終的には餌と巣までの最短経路(か、それに近い道)のみを蟻さんが動くようになる!とかいう話。
マルチエージェントシステムとかこういう群知能の面白い所は、例えばここでは
「蟻はフェロモンがお好き」という性質しかないのに、全体で見たときには「餌と巣までの最短距離がわかる!」という性質があること(創発*2というらしい。)
また、言葉とかみたいな「信号」に意味が載っているのとは違う、こういった蟻のような(環境+信号)コミュニケーションをstigmergyというんだって。
で、応用分野として

  1. 巡回セールスマン問題を解く
  2. 効率的なネットワークのルーティングを行う

とかがあるんだって。

工学的に、こういった創発を使ったシステムを作ろうとするのは難しいらしい。
単体の性質をコーディングしてやっても、それでどういった性質が創発されるのか?というのを予測するのが非常に大変なんだと。
まぁ言われてみればそりゃそうだよね…。

DNAコンピューティング

DNAの処理は生体内で同時に、並列的に行われている。細胞分裂が全身で1か所でしか起こってないわけはないよね。
で、この並列性に着目して色々計算させてみよう!っていう分野らしい。
読んでる時はすげーわかったようなつもりになってたけどこうしてみるとあんまりわかってないな…
有向ハミルトン経路問題(7頂点有向グラフ)をDNA上にコーディングして計算させたら7日で解けた!(1994年)とかそういう話だった。
本当はもっとわかりやすく色々な手法の紹介がされてたんです(><;)

副産物として、NP完全問題ってのが今まで何のことやら全然わかってなかったんだけど、この章を読んだらちょっとわかった。

免疫システム

簡単に言って

  1. 一次免疫応答→未知の抗原に対抗。抗原排除に利用された抗体などの免疫細胞はその後免疫学的記憶を行う記憶細胞に変化する。
  2. 二次免疫応答→一度出会ったことのある抗原に対抗。上記の記憶細胞を利用して素早く対処。
  3. 抑制機構→増えすぎた抗体の産生を抑制し、多様性を保持する。

の3種類の抗体産生のための情報処理機構があるらしい。
これを巡回セールスマン問題に適用すると、だまし問題(C-Type, O-Typeだかなんだか)に頑張った答えを返せるらしい。あとn人巡回セースルマン問題とか。
ぶっちゃけ何が優れててどういう領域に適用できるのかよくわからなかった。

この本で一番面白かった記述

DNAコンピューティングのとこで

より規模の大きい(実用的な)問題を解くためには、地球規模の質量のDNA分子を扱わなければならない、つまり、不可能である、という批判がある。

スケールでかすぎwww

まとめ

しばらくしたらまた読み返す
これもコーディングして動きを確かめてみたい所